# 特別寄稿

Yakult special 対談 睡眠のプロが睡眠について大いに語ります

筑波大学 国際統合睡眠医科学
研究機構 機構長
柳沢正史

1960年、東京都生まれ。1985年、筑波大学医学専門学群卒業、同大大学院進学。1991年、米テキサス大学サウスウエスタン医学センター准教授兼ハワード・ヒューズ医学研究所准研究員に就任。
2003年、米国科学アカデミー会員選出。2010年、内閣府の最先端研究開発支援(FIRST)プログラムの中心研究者。2012年、国際統合睡眠医科学研究機構の機構長就任。

ニューノーマルの時代にも、
自己のパフォーマンスを
引き出せる睡眠を。

コロナ禍によるテレワークなど、
社会や生活の姿が大きく変わった昨今、
睡眠においても、その影響を受けている人たちが
少なくありません。
心身の健康や、仕事のパフォーマンスのために
大変重要だと考えられる睡眠と
どう向き合っていくべきか、
ゲストにお聞きしました。

With Probiotic Project by Yakult

2つの大きな発見が、
睡眠の世界へ誘った。

ライター
先生はアメリカで研究者をされていましたが。きっかけは。
柳沢
筑波大学の医学部を卒業後、大学院へ進み、そこで「エンドセリン」という重要な物質を発見したことです。血管が作り出す物質で、血管の太さを制御することができ、現在は血圧に関連した治療などに利用されています。これを博士論文にしたことがきっかけとなり、数年後にテキサス大学サウスウェスタン医学センターの准教授として採用されました。それも、主任研究者として自身の研究室を与えていただき、大変光栄でした。
ライター
当初から睡眠の研究をされたのですか。
柳沢
睡眠の研究を始めた契機は、睡眠とは関係のない研究のなかで「オレキシン」という脳内物質を発見したことです。そこで、オレキシンを体内で作れないマウスを遺伝子工学で作り、マウスは夜行性であることから夜間の行動を観察してみたところ、驚くことにマウスが突然寝てしまう睡眠発作を起こしていることが分かりました。当時は、睡眠について遺伝子や分子レベルではほとんど議論されておらず、何も解明されていませんでした。非常に興味深い分野だと感じ、そこから私の研究室を睡眠研究へ方向転換させ、それ以来20年以上睡眠の研究をしています。
ライター
睡眠は誰でもとり、大事なものと認識されています。しかし、その裏にある科学的なことは、一般の人にはあまり知られていないと思われます。
柳沢
そうですね、そして科学的にも驚くほど単純なことが、まだ分かっていません。睡眠には2つの大きな謎があります。1つは、なぜ全ての動物に睡眠が必要なのか。2週間ほど完全に眠らないと死んでしまいます。いろいろな所で「睡眠は脳の休息」と言われていますが、単純な休息ではありません。睡眠中も脳の酸素や栄養素の消費率は減らず、脳は24時間働き続けています。コンピュータに例えれば、オフラインで外界から切り離され、メンテナンス作業をしている状態だと言うべきです。眠っている間に何かが修復・復元されることは経験的に分かっていますが、具体的に何が回復するのか分かっていません。さらに2つめの大きな疑問は「眠気の正体」です。もし徹夜したら、次の日は長く寝ますよね。とても明確なリバウンド反応が起きるわけですが、その単純な現象のメカニズムが実は全然解明されていません。

睡眠がカラダに、仕事に、
影響を与える。

ライター
最近、睡眠に関して一般の方々の間で、さらに興味が高まっていると思います。その背景には、どのようなことがあるのでしょう。
柳沢
一昔前は、寝ずに働くことが美徳のようなところがあり、「眠らないために、どうするか」を議論していました。日本は未だに世界で最も寝不足の国ですが、寝ないで頑張ることの不合理性に、今やっと気付き始めています。アメリカでは20年以上前に、医者の睡眠不足で医療事故のリスクが増えることが社会的な問題となり、そこから社会全体で「睡眠は大事である」という認識になっていきました。
ライター
コロナ禍になり、テレワークが推進されていますが、睡眠は変わってきていると思われますか。
柳沢
私自身は詳しく研究していませんが、大きく2パターンあると思います。1つは、テレワークになって睡眠時間を確保できるようになったことです。その一方で、生活リズムが乱れてしまうという人がいます。例えば、就寝時間が遅れていってしまい、最終的には昼夜が逆転してしまうということが、特に若い人たちに起こっています。ちなみに睡眠不足になると、いろいろな病気のリスクが高まるのですが、肥満も非常に増えます。ダイエットの最大の敵は、睡眠不足です。メカニズムは完全に分かっていませんが、睡眠不足になるとたくさん食べてしまうのです。
ライター
ストレスと睡眠の関係性はいかがでしょう。
柳沢
メンタルな意味では関係していて、特にレム睡眠が関与していると言われています。人はレム睡眠中に夢を見ており、夢の内容にはネガティブなものが多いのですが、最近では悪夢にもポジティブな役割があると言われています。日中のストレスが多い状況における感情を、夢の中で事前に体験し、ストレスに慣れようとしているという説です。エビデンスもあって、心的外傷後ストレス障害の患者は、夢を見ることが多い人ほど早く回復するというデータがあります。
ライター
睡眠の質が、仕事のパフォーマンスに与える影響はいかがでしょうか。
柳沢
基本的に、睡眠中に何らかの形で脳の機能が回復するので、昼間に脳のパフォーマンスを最大発揮させるには、睡眠が極めて重要です。「睡眠の質」とよく言いますが、まず確保すべきは「睡眠の量」です。短時間の睡眠で済まそうというのは誤りで、量を確保したうえで初めて質について考える意味があるのです。例えば、もちろん「寝室を暗く、静かに」は基本で、さらに重要なのは「適温」です。できればエアコンは止めず、その人にとって快適な温度を朝まで保つことです。
ライター
睡眠と腸内環境については、何か関係がありますか。
柳沢
腸内細菌はさまざまな重要なはたらきを担っていて、「脳腸連関」といって脳にもいろいろな影響を及ぼしています。腸内細菌が全くいない状態にしたマウスを使い睡眠を測る実験を行ったところ、活動に昼夜のメリハリがなくなり、睡眠の質が悪化しました。詳細なメカニズムは分かりませんが、腸内細菌は睡眠にも影響していると考えられます。

よい睡眠のために、
ベストな時間、適した環境で。

ライター
では、ベストな睡眠時間とはどれくらいなのでしょう。
柳沢
個人差がありますが、20歳以降の大人なら平均7時間、ほとんどの人は6~8時間の間です。自分に最適な時間を探すには、まずは休日も含めて毎日同じ時刻に就寝・起床する。これを続け、昼間に一日中眠くならず頭もスッキリしていれば、その人にとって必要十分な睡眠時間ということになります。
ライター
私たちが学生の頃、セグメンテッドスリープというものがはやりました。3時間寝て、起きて勉強して、また3時間寝ていましたが、効果的なのでしょうか。
柳沢
科学的な根拠は、あまりないと考えます。生物学的には、夜に続けて長く深く寝るのが、人間の睡眠の基本です。ほとんどの動物は、少し活動して、また寝ることを繰り返します。面白い学説があり、深く長く続けて寝る能力と頭脳の発達は、共に進化した関係にあると唱える人たちがいます。深く長く続けて寝るためには安全を確保しなければなりません。睡眠により頭脳の発達が促され、それによって夜をより安全にできるようになり、さらに長く深く眠れるようになった。例えば、住処の入り口に火を焚く能力を人間だけが獲得し、それにより外敵の侵入を防ぐことで、夜間の安全を高める等です。
ライター
コロナ禍で仕事や生活の環境が変わり、心配事やストレスで寝られないという人が多いのではないかと思っています。私は、それが睡眠にも大きな影響を与えていて、夜中に目覚めてしまいます。以前は、朝までとおして寝られたのですが。
柳沢
それは「中途覚醒」といって、誰にでも起きることです。持続的な睡眠を維持する能力は、正常な加齢現象において落ちていくものです。だから30代後半くらいから、夜間に1,2度起きるのは当たり前になります。アドバイスとしては、中途覚醒をあまり気にしないことです。良くないのは、起きるたびに時計を見たり、電気をつけたりすること。起きてしまったらできるだけ動かず、静かにしていればそのうちにまた寝られます。気にし始めると、本当に眠れなくなります。それが不眠症への第一歩です。また、客観的に睡眠を測るとしっかり眠れているのに「眠れていない」という人がたくさんおり、これを「睡眠誤認」と言います。もし、本当に目が覚めてしまったら、むしろベッドから出て、リビングにでも行ってリラックスできるような何かをする。眠くなりそうな本を読むといったことです。そして、また眠くなったらベッドに戻ればいいでしょう。ベッドに居て、長いあいだ悶々としているのがいちばん良くないです。
ライター
現代人に多い、就寝前のスマートフォンの使用は良くないことでしょうか。
柳沢
あまりエキサイトしないなら、私は全然構わないと思います。それも気にし過ぎないことです。今のスマートフォンってよくできていて、夜はブルーライトが抑えられていますし、ディスプレイ面積が狭いため、ものすごく輝度を高めない限り目に入る光は大した量ではありません。それよりも日本の住宅の問題点は、天井の照明が明る過ぎることです。欧米の住宅の寝室はシーリングライトが無く、局所的なスタンドライトだけで、全体的に暗いですよね。あれが本来の正しい寝室です。寝室だけでなく、リビングや食堂なども、晩にそれほど明るくする必要はありません。夜の時間帯に強い光が目に入ると体内時計のリズムが遅れ、余計眠りにくくなります。

もっとたくさんの人に、
もっと負荷なく、睡眠の検査を。

ライター
睡眠のデータを測れるウェアラブルデバイスを利用していますが、夜中に目が覚めた回数が分かったり、レム睡眠が足りないといった表示が出たります。気にし過ぎでしょうか。
柳沢
脳波を測定している者から見て、睡眠時間の総計に関しては、そのようなデバイスでもデータはおおよそ正確です。しかし、時間帯別の状態に関しては必ずしも正確ではないため、あまり気にしない方がいいです。特に、レム睡眠とノンレム睡眠は正確に区別できません。睡眠は脳波で測るべきだと考えています。そこで、私たちはベンチャー企業を立ちあげました。
ライター
株式会社S’UIMIN(スイミン)ですね。
柳沢
脳波による睡眠検査は、「睡眠ポリグラフ」と言います。しかし通常、検査入院となり、特殊な検査室で体に多数の電極を付けて寝ます。費用も高く、大変な検査です。検査施設も全然足りておらず、ほとんどの施設が何か月も予約待ちという状況です。S’UIMINでやろうとしていることは、被験者が在宅で、手軽に睡眠脳波を測れるサービスです。例えば、プロバイオティクスが睡眠に与える影響を客観的に知りたいというとき、脳波を測定し、データを提供するサービスです。簡単に装着できる睡眠計測デバイスを、レンタルで1週間程度、医療を含めいろいろな場面で使っていただき、睡眠中の脳波を測定します。測定したデータは、自動的にクラウド上で睡眠のステージに分けて記録していきます。このため、在宅でも手軽に検査できるようになりました。すでに多くの企業から引き合いをいただいています。
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With Probiotic Project by Yakult

with乳酸菌プロジェクト あなたの新しい健康生活を応援

いま、新しい生活様式が始まっています。私たちは、乳酸菌 シロタ株を通じて、皆さんの健やかな毎日を応援する「with乳酸菌プロジェクト」サイトを開設しました。現代の各分野で活躍するプロフェッショナルと健康へのこだわりをご紹介、さらにこのプロジェクトに共感された方の中からモニターを募集します。乳酸菌から広がるたくさんの笑顔に出会いたい!さあ、あなたもぜひご参加ください。

応援する製品

yakult400W製品画像

お通じ改善 ヤクルト400W(機能性表示食品)

「ヤクルト400W」は、1本(80ml)に「乳酸菌 シロタ株」を400億個とガラクトオリゴ糖
5.0gがWで含まれている機能性表示食品です。

届出表示:本品には生きたまま腸内に到達する乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)とガラクトオリゴ糖が含まれます。 乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)とガラクトオリゴ糖には、良い菌(乳酸菌、ビフィズス菌)を増やして腸内の環境を改善し、お通じを改善する機能があることが報告されています。

・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
・本品は機能性表示食品です。特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
・本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。

詳しくはこちら
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睡眠の質向上・ストレス緩和|腸内環境改善 Yakult(ヤクルト)1000(機能性表示食品)

「Yakult1000」は、1本(100ml)に「乳酸菌 シロタ株」を1,000億個含んだ機能性表示食品です。

届出表示:本品には乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)が含まれるので、一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげ、また、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を高める機能があります。さらに、乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)には、腸内環境を改善する機能があることが報告されています。

・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
・本品は機能性表示食品です。特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
・本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。

詳しくはこちら
yakult400LT製品画像

腸内環境改善 ヤクルト400LT(機能性表示食品)

「ヤクルト400LT」は、1本(80ml)に「乳酸菌 シロタ株」を400億個が含まれている特定保健用食品です。カロリーが気になる方にカロリー30%カット(ヤクルト400との比較)、甘さひかえめです。

許可表示:生きたまま腸内に到達する乳酸菌 シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)の働きで、良い菌を増やし悪い菌を減らして、腸内の環境を改善し、おなかの調子を整えます。

・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

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